ソニーの弁護士たちは、Bleemのことを「ブリームじゃないんだ、ブリーチ(違法)なんだ」などと思っていることだろう。PC上でプレイステーションのゲームが遊べるようになるエミュレーションソフトウェア、Bleemの販売を中止させるため、ソニーが一時差し止めを求めていた問題で、昨日サンフランシスコ裁判所で判決が下され、ソニーの申請が棄却されるという結果に終わった。
Bleemの販売停止を求めてソニーが裁判を起こしたのはこれが初めてではない。4月にBleemの一時差し止めを求めた裁判では、ソニーの申請は棄却された。つぎに5月の始めに同様の申請を行ったが再び棄却された。今回の3度目も棄却され、三振に終わっている。ソニーは今後の法的活動についてはいっさいコメントをだしていないが、多くの業界ウオッチャーたちはソニーが再びBleemに対してさらなる法的圧力をかけると考えている。
差し止め申請が失敗に終わったことで、Bleemにとっては法的に重要なチェックポイントを通過したことになる。Connectix社に対して行った同様の裁判では、ソニーは勝利をおさめ、Connectix社のエミュレータを出荷停止に追い込んだ。Connectix社は、マッキントッシュ用のプレイステーションエミュレータを開発した会社である。この裁判では、Connectix社がプレイステーションのBIOSを違法に複製したというソニーの主張がうまく認められた。
7月以降にリリースされたBleemでは、PC上で何百種類ものプレイステーションゲームを楽しむことができる。PCの備えているハードウエアの機能によって、グラフィックスがわずかに美しくなるゲームも多い。Bleemデモ版は50万本以上もダウンロードされた。Bleemの製品版はNavarre社より販売されており、CompUSA、Fry's
Electronics、Electronics Boutique、Hastings、Virgin Megastoreといったアメリカ国内の小売店でも購入できる。
ゲームを遊ぶ人たちにとって、差し止め請求が棄却されたことの意味というのは、きわめて簡単なことだ。つまり、選択の自由ということである。Bleemの販売がソニーの決算にマイナスの影響を与えるというのは疑わしい。実際にはBleemによってプレイステーションゲームの販売数が増えるかも知れない、ということも十分考えられるのだ。
サードパーティがプレイステーションのゲームを作る際には、高額のライセンス料をソニーに支払わねばならない、という問題が今回の訴訟の中心にあった。これらのサードパーティはプレイステーションもライセンス料も無視して、直接Bleemのソフトを開発することができるのだろうか?これはソニーがおそらくは聞かれたくないと思っている法的な問題である。Bleemが成功への足がかりをつかむことになれば、ドロ沼の問題に発展する可能性がある。ソニーが向かうところ敵なしの巨人であることは誰もが認めるところであるが、ソニーの抱える不安を見つけるのは難しいことではない。
ソニーのプレイステーションは今週から値下げを行い99ドルで販売を始めた。一方Bleemは30ドルである。Bleemにとって命取りになるのは、一連の訴訟ではなく、単に市場での競争だった、ということになるかもしれない。
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